下流老後の要因と、医療制度の活用について
2016.03.15
人生には様々な落とし穴があり、普通に裕福に生活していたはずなのに、一気に崩れてしまう事もあります。現在の下流老人に該当する方々の中には、現役で働いている時には平均以上の収入、非常に裕福な暮らしをしていた方も少なくありません。 下流老人に陥るバターン 裕福な生活から下流への転落、そこに至るには5つのパターンがあると指摘されています。 ① 病気・事故にあい、高額な医療費負担がある。 ② 収入に見合った高齢者介護施設に入居ができない ③ こどもが、ワーキングプア、引きこもりなどで自立が出来ていない。 ④ 熟年離婚による年金受給額の分割、財産の分配 ⑤ 独居状態などで認知症を発症する 地域包括支援センターに寄せられる困難なケースであれば、これらの問題が複合化し重度に進展して表面化してくる場合も少なからずあります。「この様な状態になるまでに、手のうち様があったのでは?」と紐解いてみると、上記にあげられた様なターニングポイントがある場合があります。 今回は下流要因の一つである、医療費に対する社会制度をご紹介したいと思います。 高額療養費の還付制度 癌や脳血管障害などになった際には、月々に20万以上の医療費がかかります。その際に一定金額以上の支払い分を返還してくれる制度として「高額療養費」制度があります。 月々の上限額は年収によって決定されています。 住民税非課税世帯 35400円 年収 370万以下 57600円 年収370万円~世帯では、計算式が複雑になっています。 年収 370万~770万 80100円+(医療費総額-267000円)×1% 計算式の中にある「医療費総額」とは病院で支払いをする金額ではなく、医療保険で補填されている金額も合わせた総額になります。通常であれば、医療費は3割負担になっています。例えば、窓口で900円を支払った場合、総額では3000円の医療費がかかっているのです。 この様に、実際に支払った金額を10割に換算して計算式に当てはめるのですが、概算すると87000円前後になります。年収770万円以上世帯にも、あと2段階基準がありますが割愛します。 年に3回以上、高額療養の対象になった場合は、4回目から上限額が下がります。上限額はきめられていますが、自分で申し出をしなければどこまでも払い続ける事になります。 その他、詳細は、こちらをご参照下さい。 「厚生労働省HP 高額療養を受給される皆様へ」 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000075123.pdf 難病制度 原因や治療法が確立されていない「難病」について、医療費を助成する制度があります。認定されると医療費負担が、0円~3万円になります。 「難病」というと敷居が高く、対象となりにくいと思われるでしょうが、難病の拡がりとともに、現在政府はすそ野を広げていっています。 厚生労働省は難病対象疾患を、56疾患から、昨年1月に110疾患に増やし、さらに、300疾患まで段階的に拡大していく予定にしています。 これまでは助成対象ではなかったご自身の持病が、難病認定にされている場合もあるかもしれないので一度ご確認下さい。 現在の対象疾患についての詳細はこちらをご参照下さい。 「厚生労働省HP 難病制度の拡大について」 http://www.pref.nara.jp/secure/132670/kininteiseido.pdf 障害者自立支援制度 近年広がり続けている精神疾患は、国民の4人に1人の割合となり厚生労働省にも5大疾患と位置づけられています。身近な問題でありながら精神疾患は長期の通院が必要で、投薬にかかる費用負担は大きくなっています。 「自立支援医療制度」を利用する事で、精神医療に関する通院費、薬科代が1割負担となります。申請先は各市町村の窓口となっています。 健診制度 医療費が高額にならない為には、早期発見、生活習慣病予防が、なによりも効果的な医療費対策になります。 市町村や各種医療保険組合では、健康診断の助成制度が設けられています。年に一度、封書で受診案内が来るのでご存じの方も多いと思います。 健診の内容や助成額は保険組合によって異なりますが、自費で受けると高額になる健診料が補填をされますので、積極的なご活用をお勧めします。ただし、健診項目で認められていない項目が落とし穴になる事もあります。 会社の健診などで不足がある場合は、お住まいの市町村の健診制度をご確認下さい。胃癌、肺癌、乳癌、子宮癌など、助成をしている自治体も非常に多いので併せて全身チェックを心がけて下さい。中には、特定健診で「運動が必要」と医師からの指示があればスポーツジムの費用を補助してくれる自治体もあるそうです。 知らねば大損、申請主義の社会制度 この様に、高すぎる医療費負担などがあれば、勝手に上限を教えて貰えそうなものですが、社会制度の多くは「申請主義」になっています。返還されるお金があっても、制度を知らなければ、貰えるものも貰えないのです。 生命保険会社などでは、いざという時の健康不安をネタに医療保険を勧める所もあり、利用できる社会制度の情報を意図的に伏せられている事もあります。もし高額の医療費がかかりそうな時に、民間医療保険に加入してないから補助は受けられないとあきらめる事なく、利用できる制度をご確認下さい。 また病院に、メディカルソーシャルワーカー、医療相談員がいる場合には、利用できる制度の案内や、手続きの代行をして貰えますので、ぜひご相談下さい。