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石油資源が支える豊かな老後——ノルウェーの高齢者福祉から学ぶ新しい福祉国家の形

2026.01.20

北欧の小国ノルウェーが世界幸福度ランキングで常に上位にランクインする理由をご存知ですか?
その秘密は、北海油田からの石油・天然ガス収入を原資とした世界最大級の政府年金基金と、高齢者一人ひとりの尊厳を守る充実した福祉制度にあります。
今回は、石油資源を賢く運用し、国民の将来に備えるノルウェーの高齢者福祉事情について詳しくご紹介します。

 

高福祉国家ノルウェー

 

 

石油収入が支える世界最大級の政府年金基金

ノルウェーの福祉を語る上で欠かせないのが「ノルウェー政府年金基金グローバル」、通称「石油基金」です。
この基金は1990年に設立され、北海油田から得られる石油・天然ガスの収入を原資として運用されています。
2020年時点で運用資産は100兆円を超え、世界最大級の政府系ファンドとなっています。
この基金の特徴は、石油収入を直接国民に配当するのではなく、将来世代のために長期的な視点で運用している点です。
財務省の指針に基づき、世界73カ国9,000銘柄以上に分散投資を行い、株式、債券、不動産などにバランスよく投資しています。
運用は約500人の資産運用専門家によって行われ、「長期・積立・分散」という堅実な方針のもと、リスクを抑えながら着実に資産を増やしています。
基金からは年間で実質リターンの約3%までを国家予算に使用できるという財政ルールがあります。
この資金は医療、教育、インフラ整備などの公共サービスに充てられ、間接的に国民の生活を支えています。
特に高齢化社会に備えた福祉サービスの財源として重要な役割を果たしており、将来の年金コストの増加に対応するための貴重な資源となっています。
また、この基金には倫理委員会が設置されており、基本的人道主義に反する兵器を製造する企業への投資を禁止するなど、責任ある投資を心がけています。
資源国家として石油収入を得ながらも、その使い道に倫理的な配慮を忘れない姿勢は、他国の模範となっています。
ノルウェーは約555万人という少ない人口でこの巨大な基金を運用することで、石油資源がいずれ枯渇する将来に備え、持続可能な財政基盤を確立しているのです。

 

 

手厚い年金制度と医療費負担の軽減

ノルウェーの年金制度は、国民の老後の生活を安定的に支える重要な柱となっています。
受給資格は16歳から66歳の間に3年以上ノルウェーに居住していることが条件で、40年以上居住すれば満額を受給できる仕組みです。
通常の受給開始年齢は67歳ですが、新制度では62歳から75歳の間で自由に選択できるようになり、年齢が上がるほど受給額も増える設計になっています。
年金額は「基礎額(G)」という概念を用いて計算され、2019年時点で基礎額は年間約130万円(月額約11万円)です。
最低保障年金は単身者で基礎額の2倍、つまり年間約248万円(月額約21万円)が支給されます。
これに加えて、就労時の所得に応じた「インカム年金」が上乗せされるため、現役時代にしっかりと働いていた人はより手厚い年金を受け取ることができます。
こうした充実した年金制度により、ノルウェーの高齢者は経済的に安定した老後生活を送ることが可能となっています。
医療費についても国民に優しい制度が整っています。
ノルウェーでは年間の医療費自己負担額に上限が設けられており、一定額を超えた分については無料になります。
高齢者だけでなく、年齢に関係なく病院代は基本的に無料または低額で利用できるため、経済的な理由で医療を受けられないという事態は起こりにくくなっています。
さらに興味深いのは、高齢者への外出支援として月に数万円のタクシー代が支給される制度があることです。
これは高齢者の社会参加を促進し、孤立を防ぐための配慮といえます。
高齢になっても自由に外出でき、友人との交流や趣味の活動を続けられる環境が整えられています。
こうした包括的な支援により、ノルウェーの高齢者は経済的な不安を感じることなく、尊厳ある生活を送ることができるのです。

 

 

在宅ケアを重視した個別対応の介護サービス

ノルウェーの高齢者福祉で最も特徴的なのは、「できる限り自宅で生活を続ける」という理念に基づいた在宅ケアの充実です。
高齢者の介護責任は政府・政治家・自治体が法的に負っており、家族が介護を担う必要はありません。
この考え方は1970年代に子どもの親に対する扶養義務が廃止されて以来、社会に深く浸透しています。
在宅ケアの体制は地方自治体(コミューン)が中心となって提供しています。
訪問看護、ホームヘルプ、理学療法士による訪問リハビリ、補助器具の提供、緊急警報機の設置、移送サービス、配食サービスなど、多様なサービスが用意されています。
専門職である看護師や理学療法士が定期的に訪問し、医療的なケアを含む介護を担うため、重度の介護が必要な状態でも在宅での生活が可能になっています。
実際、日本なら施設入所が必要と判断されるような認知症患者でも、1日に5回、6回と訪問介護を受けながら在宅生活を続けるケースが一般的です。
施設については、医師が「明らかに一人で生活することが困難」と判断した場合に入居が検討されます。
ノルウェーには主に2種類の高齢者施設があります。
一つは「オムソルグスボーリグ」と呼ばれる24時間医療サポート付きマンションで、家賃は月額約10万円(食費・医療費別)です。
もう一つは「シッケイェム」と呼ばれる介護付き老人ホームで、重度の要介護状態や認知症の高齢者が入居します。
回復期リハ施設の利用料は1泊最大約3,000円で、部屋代、食事代、薬代、トレーニング代、介護介助代がすべて含まれています。
ノルウェーの介護の質を支えているのは、高齢者一人ひとりのQOL(生活の質)を重視する姿勢です。
北欧では「一緒にお茶やコーヒーを飲む」「散歩に付き添う」「ヘアケア・マニキュア」といった日常的な援助行為が日本よりも頻繁に行われています。
これは現場職員の裁量が大きく、利用者が日常的に求めるケアに柔軟に対応できる環境があるためです。
介護は単なる身体介護ではなく、その人らしい生活を支えるものという理念が実践されており、高齢者の尊厳と自立を最大限に尊重する文化が根付いています。

 

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ノルウェーの高齢者福祉は、石油資源という天然の恵みを将来世代のために賢く運用し、国民全体で支え合う社会保障制度を構築した好例です。
高い税負担という代償はありますが、その見返りとして安心して老後を迎えられる環境が保障されています。
在宅ケアを重視し、高齢者の自立と尊厳を守る姿勢は、高齢化が進む日本にとっても大いに参考になるでしょう。
資源に恵まれない日本がそのまま真似することは難しいかもしれませんが、高齢者一人ひとりを大切にする理念と、持続可能な財政運営のあり方については、学ぶべき点が多くあります。

 

 

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